[海外コンテナ輸送のカビ対策|木製容器製造90年の専門家が教える対策術]
海外への製品輸送で悩ましい問題といえば、やはりカビの発生ではないでしょうか。
せっかく丁寧に梱包した商品が、到着時にカビで台無しになってしまうことは、輸出企業にとって大きな損失となります。
当社は木製容器製造で90年の実績を持つ専門家として、数多くの輸出企業様のカビ対策をサポートしてきました。
今回は、船便による海外コンテナ輸送におけるカビ対策について、実践的なノウハウをご紹介します。
海外コンテナ輸送でカビが発生する主な原因
海外への製品輸送において、カビの発生に悩まされている企業は少なくありません。
特にコンテナ船での長期の輸送中にカビが発生する事例は多く存在します。
カビの発生では製品の品質に影響は与えませんが、生理的な不快感から製品の品質への影響を連想させてしまい、取引先との信頼関係にも影響を及ぼす重大な問題です。
コンテナ輸送中のカビ発生は、主に以下のような要因が複合的に作用して起こります。
コンテナ内の温度変化による結露の発生
海外コンテナ輸送における最も深刻な問題の一つが、コンテナ内の温度変化による結露の発生です。船便による国際輸送では、様々な気候帯を通過するため、コンテナ内の環境は絶えず変化にさらされます。
特に、熱帯地域を通過する際には、昼夜の温度差が著しく大きくなり、この温度変動がカビ発生の主要な原因となっています。
例えば、日中は強い日差しによってコンテナ内の温度が60度以上まで上昇することもあります。
一方、夜間になると気温が急激に低下し、場合によっては40度以上の温度差が生じることも珍しくありません。このような急激な温度変化は、物理的な法則により必然的に結露を引き起こします。
具体的には、温かい空気は冷たい空気よりも多くの水分を含むことができるという性質があります。そのため、日中に温められた空気中の水分は、夜間の温度低下に伴って空気中に留まることができなくなり、コンテナの天井や壁面、そして梱包材や製品の表面に水滴として付着します。この現象が結露です。
特に注意が必要なのは、この結露が目に見えないレベルで連日発生し続けることです。
たとえ一回の結露で生じる水分量が微量であっても、それが数週間から数ヶ月に及ぶ輸送期間中に繰り返されることで、梱包材が徐々に湿気を帯び、カビの発生に適した環境が形成されていきます。
また、コンテナ内の空気の循環が不十分な場合、結露によって生じた水分が蒸発せずに留まり続けることで、状況はさらに悪化します。特に、梱包材と梱包材の間、あるいは製品と梱包材の間の空間は、空気の流れが滞りやすく、一度発生した結露が長時間残存しやすい傾向にあります。
このような環境下では、カビの胞子が活性化し、繁殖を始めるのに必要な条件が整ってしまいます。カビの多くは、温度20〜30度、相対湿度70%以上の環境で急速に成長するため、結露による局所的な高湿度環境は、まさにカビにとって理想的な生育条件となってしまうのです。
梱包材自体に含まれる水分
また、梱包用木材自体に含まれる水分も重要な要因となります。
特に木材を主とする梱包材は、その性質上、水分を含んでおり、この水分が輸送中のカビ発生の潜在的なリスクとなっています。
住宅に利用される建築用木材は乾燥処理を施されている木材が多く、木材の含水率(木材に含まれる水分量)は15%以下になっています。
しかし、梱包用木材は建築材とは違い乾燥処理までは施す事例は稀です。よって特別に乾燥処理を施さない限り梱包用木材の含水率は15%よりも高い場合が多いという事を荷主や物流業者が共通で認識することが重要です。
特別に乾燥処理を行っていない木材を梱包材として使用する際の問題点は以下の通りです。
まず、温度変化に伴う水分の移動が起こりやすくなります。木材内部の水分は、温度変化によって気化と凝縮を繰り返し、コンテナ内部に結露として現れる可能性があります。
コンテナ内は密閉性が高く自然な空気の流れが著しく制限されるので、コンテナのメリットである気密性がデメリットとなり結露の原因を作り出しています。
その結果、梱包材から放出された水分がコンテナ内に滞留し、局所的に湿度の高い環境が形成されます。このような環境下では、カビの胞子が活性化しやすく、一度発生したカビが急速に繁殖する可能性が高まります。
特に、ヨーロッパ向け、アフリカ向け、北米、南米、南半球へのコンテナ輸送は到着までの期間も長いことに加えて、赤道を通過することもありコンテナ内の結露の頻度が高く、カビの発生・繁殖し易い傾向があるので梱包材の選択には注意が必要です。
適切な梱包材料の選び方と重要性
海外コンテナ輸送におけるカビ対策において、最も重要な基盤となるのが梱包材料の適切な選択です。これは、製品の保護という基本的な機能に加えて、長期の輸送中におけるカビの発生を防止する重要な役割を担っています。
いかに丁寧な梱包作業を行っても、使用する材料の選定を誤れば、カビの発生を効果的に防ぐことはできません。
木材の品質管理と選定基準
輸出用梱包材として使用する木材の品質は、カビ対策の成否を大きく左右します。
高品質な木材とは、適切な乾燥処理が施され、含水率が厳密に管理されたものを指します。特に重要なのは、人工乾燥処理(キルン乾燥)が施された木材(LVLなどの加工木材も含む)の使用です。この処理により、木材内部まで均一に乾燥させることができ、後々の水分移動リスクを最小限に抑えることができます。
防カビ処理の選択と注意点
梱包材の防カビ処理は、特に長期の船便輸送では極めて重要です。効果的な防カビ処理には主に以下の方法があります。
- 化学的処理:防カビ剤の塗布や含浸
- 物理的処理:特殊コーティングの施工
防カビ処理で一番現実的な処理は「防カビ剤の塗布や含侵です。
ただし、防カビ処理を施す際は、輸出先国の規制に細心の注意を払う必要があります。
特に食品関連製品の輸送では、使用可能な防カビ剤が厳しく制限されることがあります。
また、環境規制の観点から、特定の化学物質の使用が禁止されているケースもあるため、事前の確認が不可欠です。
総合的な防湿対策の構築
効果的なカビ対策には、木材だけでなく、補助的な梱包材料の適切な選択と組み合わせが重要です。具体的には以下の要素を検討する必要があります。
- 木材以外の梱包材の選択
- 防カビ・耐カビのベニヤの採用
- 段ボールの採用
- 湿気を発生しにくい素材の採用
- 湿気を吸収しにくい素材の選定
- 防湿材の活用
- 性能シリカゲルなどの乾燥剤の戦略的配置
- 結露防止用の調湿材をコンテナ内部に貼付ける
これらの材料を適切に組み合わせることで、単一の対策では得られない総合的なカビ防止効果が期待できます。特に、防湿シートと乾燥剤の併用は、コンテナ内の湿度管理において相乗効果を発揮します。
LVL材を使用した効果的な梱包手順
海外コンテナ輸送における梱包材として、近年特に注目を集めているのがLVL(単板積層材)です。
LVL材は、薄い木材を積層接着して製造される高性能な建材で、従来の木材と比較して優れた特性を持っています。その主な特徴として、寸法安定性が高く、含水率が低く安定していることが挙げられます。これらの特性は、長期の海上輸送(特にコンテナ輸送)におけるカビ対策において効果を発揮します。
最適なLVL材の選定
LVL材の選定にあたっては、製品の特性を十分に考慮する必要があります。
まず重要となるのが、製品の重量とサイズに応じた適切な厚さの選定です。
製品重量に応じた強度計算を行い、さらに積載方法による荷重分散も考慮に入れます。
耐荷重設計と組立ての要点
機械を海外の目的地まで安全に輸送するには木製容器の耐荷重設計が重要になります。機械のサイズ、重量、形状に合わせてオーダーメイドの木製容器を設計します。さらに、仕向国の輸送環境(道路・線路・積替え回数・荷役機器の種類・天候など)に合わせた木製容器の設計を行います。それから、木製容器の構造の安定性を高めるため、適切なボルトやラグスクリュー(大きなビス)・釘を使用し、木製容器の組立を行います。
品質管理と最終確認
品質管理の面では、製作時から出荷までの各段階で綿密なチェックを行います。寸法精度や接合部の強度、選定材料の不良の確認、釘やボルトなどのサイズ・数量の確認など、多角的な視点からの確認が必要です。
このように、LVL材を使用した梱包では、材料選定から最終検査まで、各工程できめ細かな対応が求められます。これらの工程を確実に実施することで、長期の海上輸送でも安全な製品輸送が実現できます。
カビ対策に特化した梱包テクニック
何度も申しますがカビの発生を防ぐ為に最も重要なのが、「コンテナ内の湿度を上げない事」です。
残念ながらコンテナ内の湿度を高める最も大きな原因は、梱包用木材に含まれている水分なので、通常の梱包用木材からLVL(乾燥された木材や加工木材)に変更し、加えて木製容器の外壁に利用している合板をより性能の高いものに替えることでカビの発生は大幅に抑えることが出来ます。
結露対策
また、カビ対策の基本に加えて結露対策も重要なポイントとなります。
コンテナ内の温度変化による結露を防ぐため、吸湿シートや乾燥剤を効果的に配置する場合ががあります。通常はコンテナ内に吸湿シートや乾燥材まで施すことは稀ですが、カビの発生を防止する手段としては効果は非常に大きな方法です。特に、製品の上部や側面など、結露が発生しやすい箇所には、十分な防湿対策を施すことが重要です。
まとめ
海外コンテナ輸送におけるカビ対策は、適切な材料の選択と専門的な梱包テクニックの組み合わせによって実現できます。特に、含水率が管理された木材やLVL材の使用、効果的な通気層の確保、そして確実な防湿対策の実施が重要なポイントとなります。
これらの対策を適切に実施することで、長期間の船便輸送においても、カビの発生リスクを最小限に抑えることが可能です。ただし、カビ対策は一度確立した方法を漫然と続けるのではなく、常に効果を検証し、必要に応じて改善を図ることが大切です。
製品の品質維持は、企業の信頼性に直結する重要な要素です。
本記事で紹介した対策を参考に、自社の輸送環境に最適なカビ対策を確立し、より確実な品質管理を実現していただければ幸いです。